下が古い.上が新しい.間は他所

2008-07-16

細胞の親子関係という二項関係だけに基づく有向グラフを書いてみる.個々の細胞をノード,親子関係をエッジとすればよい.細胞の分裂と融合によって,二つの細胞をつなぐパスが複数生じることがある.要するに,ネットワークである.このとき重要なのは,この細胞のネットワークだけを見て個体を識別することはできない,ということである.このネットワークから個体を識別するには,たとえば親子関係の中に減数分裂とか受精という特殊な関係が存在するとか,そういう細胞システムを外から見た新たな情報が必要になる (システムを外から見る,というのも変な表現だが).これによって,細胞のネットワークを単純化し,個体のネットワークとして見ることができるようになるが,それだけであって,やはりネットワークはネットワークなのである.このネットワークの「網の目」の集合を考えると,非常に小さいもの (近親交配) からほとんど無限大のもの (いわゆる cladogenesis 的な何か) まであるし,小さい目が組み合わさって大きい目を作るという厄介な構造がある.「種」をオートポイエシスだと想定すると,おそらくそれはどこまでも広がって系統ネットワーク全体に一致してしまうような気もする.結局,「種」でもなんでもいいのだが「個体より高次の集合」を作るためには,ネットワークを外から見て恣意的な境界を設定しなければならない.